(赤岳山行の続き)
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いびきをかいて爆睡するトータスの隣で、足の痛みと風の音に
悩まされ、なかなか寝つけぬ夜を過ごす。
明け方になり、風も少し弱まってきたところで、テントの外を
のぞいてみる。
春の気配を感じさせた昨日と違い、一面の銀世界。
厳冬真っ只中といった感じである。
足は更に痛くなっており、腫れぼったい…というか、
腫れあがってます。
軽く凹むが、落ち込んだところで状況が変わるわけではない。
気を取り直し、朝食の準備に取り掛かる。
おにぎりとスープパスタ、コーヒーを飲み、腹ごしらえ。
下山の準備に取り掛かる。雪を溶かしお湯を作り、
テルモスに温かいコーヒーを注ぎ込む。
外は吹雪だ。足のこともあり、万が一のことを考え、備品・
予備食料のチェックをする。
おにぎり×2個、魚肉ソーセージ×2本、乾燥米 200g、
カレー×2食、コーンスープ×4P、その他非常食×3食、
飴・ブドウ糖・チョコ…etc.
マッチ×2箱、メタ(着火剤)×1箱、予備燃料×1缶、
予備防寒具、救急キット、ローソク、予備電池、ツェルト、
補助ロープ×20m、ホッカイロ…etc.
滑落・落石などで即死しない限り、仮に遭難しても
1週間くらいは生き延びられるかな…。荷物をまとめていく。
救急キットから包帯を取り出し、足首をガッチリと固定。
できる限り、足首に負担がかからないようにする。
湿布を忘れるという、初歩的なミス
を犯しているが、ないものは仕方ない。足首を固定しておくだけでも
いくらかマシだろう。
テントを片し、撤収作業を終え、下山開始することにした。
痛ぇ! いてぇ!! イテェ!!! 痛ィィィィイ!!!!
足を踏み出すたびに顔が引きつる。先行していた
トータスが振り返る。
「大丈夫?」
ん? 大丈夫だよ。平気平気♪
ダメと言ったところで、どうにもならないので歩き続ける。
片足が動かない程度で、根を上げたら漢じゃない。
以前読んだ「神々の山嶺」の主人公であるクライマー
羽生丈二が人類未踏の壁に挑んだ最後の言葉を思い出す。
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さあ…立て たちあがれ
体力が ひとしずくだって のこってるうちは
ねむるなんて ゆるさないぞ ゆるさない
~ 中略 ~
ほんとうのほんとうに どうしようもなくなったら
もうほんとうに
こんかぎり あるこうとしても だめだったら
思え
ありったけのこころでおもえ
想え―――
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ホントに、こんな極限状態だったら死んでますけどね(笑)
まあ、つらかったってことですよ… (T_T)
ひたすら下っていくと、風も弱まり雪もやんできた。
雲の切れ間から青空がのぞき始めている。
後ろから声をかけられ、振り向くと、昨日山頂付近で会った
3人組のパーティーがいた。
「見たことあるなと思ったら、君たちか」
どこから見ても「山男」という以外、例えようのない人だ。
足を引きずって歩くオイラの心配をしてくれ、湿布を頂く。
ありがたい。
手伝おうか?と言われるが、迷惑をかけるわけにはいかない。
礼を言い、先に行ってもらう。どうにか美濃戸山荘まで
辿り着くと、3人組が山荘前で休憩をしていた。
「車で駅まで送ってあげるよ」
ご好意に甘え、車に乗せてもらう。連絡先を交換。
今回の八ヶ岳は個人的山行で、普段は某山岳会で
富士山の登山指導員などをしているとのこと。
いい出会いを持てた。
下山後は、茅野温泉で汗を流し、蕎麦屋で乾杯。
調子に乗って、つまらない怪我をしてしまったが、
出会いもあり、楽しい時間を過ごすことができた。
またいつか、冬の赤岳を散歩したい…そう思える山行だった。

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